“こちら”と“あちら”、“あの世”と“この世”、“生”と“死”など、私達は境界の明確な二つの要素で物事が成立していると考えがちです。
しかし、死が心停止とするか脳死とするかと議論があるように、基準は一定ではありません。実は二つの間には曖昧な何かが潜んでいると思います。前川は今回、この二つの間にある曖昧な何かをテーマに自身を含む三人のグループ展を企画・提案します。
展覧会の構造
今回 前川宗睦の企画するグループ展は、大きく分けて三つ段階で構成されている。
①まず入ってすぐの左手に見える出っ張った壁面に前川のペインティング作品。
②進んで正面に、スクリーンで仮設の壁面を造り投影される、山口諒の映像インスタレーション。
③その山口のインスタレーションを通り抜けた先に、松野真知によるインスタレーションとなっている。
①前川宗睦
前川の今回のプランで予定している自身の作品は「花」が描かれた作品である。
ある時 墓参りをしたとき、墓地のゴミ箱にまだキレイなお供えの花が捨てられているのを見つけました。それを見た時、合理的には正しいと思う気持ちと、宗教的には間違いという気持ちが同時にわき起こり、答えのない問をぐるぐる考えさせられた。
今回のプランでは、上の疑問の中 制作したものの秘匿していた作品を出品する予定です。
●作品参考画像
きっかけとなった墓地のゴミ箱の写真
②山口諒
“mirage”は海のもつ“生”と“死”を元に、海が上下対称に構成された山口諒の映像作品である。下部の海は現実の海であり、上部は下部を反転させた海である。
山口諒の今回のプランは、彼の映像シリーズ“mirage”を90度回転させ、縦構図にし、海と海の狭間を異界への入り口に見立てたインスタレーションである。
プロジェクターで投影されるスクリーンには、縦に真っすぐの切り込みが入っており、鑑賞者はまるで映像の中に入り込むように、切り込みから出入りをする事が出来る。
この作品を通し鑑賞者は、どこか別の場所へと踏み込む事を体感できるでしょう。
●作品参考画像
mirage,
③松野真知
絵画は光があることにより知覚することができ、また同時に私たちの存在も光がなくては成立はしない。
松野真知は鏡のようなメタリックなキャンバス布を、屋外の日の光の中、自らが木枠の変わりとなり立つことで絵画を成立させる。
自身の身体を使用しながらも、キャンバスに写り込む風景によって彼の存在は風景の中にとけ込んでしまう。
この作品は日の光の中、絵画を成立させると同時に、自身が絵画の一部となることで、自身が生きることそのものが作品へと昇華されている。
松野真知の今回のインスタレーションでは、自身が撮影した日の出の映像を左壁面に投影し、右側に架けられたキャンバス地に光を映し出す。
松野のブースでは映像の日の光以外の照明はつけず、よりこのシリーズが行われる状況をリアルに再現する。
地下という日の光が入ってこない会場での、逆境を利用した新たな試みである。
また確定したわけではないが、福岡から松野氏が会期中会場に来場し、自身が木枠になるパフォーマンスを行う予定である。
●作品参考画像
上から順に、
from the ground(Green)/その地から(みどり)
取り出されたカンヴァス
日の出の映像
経歴
山口諒
1990年 長野県に生まれる
2012年 名古屋芸術大学美術学部卒業
現在 名古屋芸術大学大学院1年在籍
グループ展
2012年 「460人展」 市民ギャラリー矢田 愛知
2012年 「What I am」 名古屋芸術大学 Art&Design Center 愛知
2012年 「OPEN LAB」 ART LAB AICHI 愛知
2012年 「単純な多面」 MATSUO MEGUMI VOICE +GALLERY pfs/w 京都
上映歴
2011年 イメージ・フォーラム提携企画「映像の学校Ⅱ」 愛知芸術文化センター 愛知
松野 真知
1983年 北九州市小倉に生まれる
2007-2008年 松野牧場 修行
2010年 名古屋芸術大学絵画学科 卒業
2013年 松野牧場 就農 うきは在住
個展
2012年「LIGHT OF DAY」千草ホテル中庭アートproject
2011年「消えては、浮かぶ」Gallery YANYA
グループ展
2012年「とらんしっと:世界通り抜け」Qmac (うきはの牛飼いアーティスト)
2009年「記憶の庭」旧加藤邸
2008年「楽園の知恵」Art & Designセンター
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